16総 則
(保安原則④:電線などの断線の防止)
前へ
・電線などの断線の防止
(電技第6条、解釈第65条など)
電線、支線、架空地線、弱電流電線などその他の電気設備の保安のために施設する線は、通常の使用状態において断線のおそれがないように施設すること。
・高低圧架空電線の太さなど
使用電圧の区分
最小の太さ
市 街 地
市 街 地 外
低圧
300V以下
3.2mm(引張強さ3.44kN以上)
300V超過
5mm
(引張強さ8.01kN以上)
4mm
(引張強さ5.26kN以上)
高圧
架空地線
4mm
(引張強さ5.26kN以上)
・使用できる電線類
低圧
300V以下
絶縁電線・ケーブル・多心型電線
300V超過
絶縁電線・ケーブル
高 圧
高圧絶縁電線・特別高圧絶縁電線・ケーブル(半導電性外装ちょう架用高圧ケーブルを含む)
・電線の安全率
硬銅線・耐熱銅合金線
特別高圧・高圧
2.2以上
300Vを超える低圧と多心型電線の場合も左欄と同じ
その他の電線
特別高圧・高圧
2.5以上
電線の太さの規制区分
市街地、市街地外の区分で決められており、別項に示す保安工事では太さについても強化規定されている。
300Vを超える低圧架空電線の規制
引込用ビニル絶縁電線や多心型電線は使用できない。
引込用ビニル絶縁電線の構造
多心型電線の構造
17総 則
(保安原則⑤:電線の接続)
・電線の接続
(電技第7条、解釈第12条)
電線を接続する場合は、接続部分において
電線の電気抵抗を増加させないように接続する
ほか、絶縁性能の低下および通常の使用状態において断線のおそれがないようにしなければならない。
張力が加わる箇所
絶縁電線相互、絶縁電線
とコード、キャブタイヤ
ケーブルを接続する場合
電線の強さを
20%
以上減少させないこと
電線の接続部分は
接続管
などの器具を使用し、または
ろう付
けをする
絶縁電線の絶縁物と同等以上の絶縁効力がある接続器を用いるか、十分被覆すること
張力が加わらない箇所
コード相互、キャブタイ
ヤケーブル相互、ケーブ
ル相互またはこれらのも
の相互を接続する場合
コード接続器
、
接続箱
などの器具を必ず使用する
(8mm
2
以上のキャブタイヤケーブルの接続、金属皮膜のないケーブルの接続を除く)
アルミ導体と銅導体の電
線を接続する場合
接続部分に
電気的腐食
が生じないこと
直接接続 分岐接続
接続の3大原則
①電気抵抗を増加させない。
②絶縁性能を低下させない。
③通常の使用状態で断線させない。
電線相互の直接接続の可否
18総 則
(保安原則⑥:支線の施設)
・支線の施設
(解釈第62条)
高圧架空電線の支持物として、木柱、A種鉄柱、A種鉄筋コンクリート柱を使用する場合には、下図の箇所に支線を施設する必要がある。
・支線の仕様
(解釈第61条)
支線の安全率(最小)
上図支線の場合
1.5
支持物自体に要求さ
れる強度分担の場合
2.5
支線の必要条数
19総 則
(保安原則⑦:電気機械器具の危険の防止)
・高圧電気機械器具の危険の防止
(解釈第21条など)
発電所、変電所、開閉所またはこれらに準ずる場所以外に高圧用の電気機械器具を施設する場合は、次のいずれかの方法で施設しなければならない。
①機械器具の周囲に人が触れるおそれがないように適当なさくを設け、さくの高さとさくから充電部分までの距離の和を
5m以上
とし、かつ、
危険である旨の表示
をする。
②機械器具を地表上4.5m(市街地外4m)以上の高さに施設し、かつ、人が触れるおそれがないように施設する。
③工場などの構内において、機械器具の周囲に人が触れるおそれがないように適当な
さく
を設ける。
④機械器具をコンクリート製の箱または
D種接地工事
を施した金属製の箱に収め、かつ、充電部分が露出しないように施設する。
⑤機械器具を屋内の取扱者以外の者が出入りできないように設備した場所に施設する。
⑥充電部分が露出しない機械器具に、簡易接触防護措置を施す。
動作時にアークを生じる器具の施設
・
対象器具:高圧・特別高圧の開閉器、遮断器、避雷器、その他これに類する器具
・
施設条件:動作時にアークを生じるものは、火災のおそれがないよう、木製の壁・天井その他の可燃物から離して施設する(耐火性のもので両者を隔離する場合は例外)
・
隔離距離
高圧用
1m以上
特別高圧用
2m以上
20総 則
(保安原則⑧:接地工事の種類)
・電気設備の接地
(電技第10条、第11条)
①電気設備の必要な箇所には、異常時の電位上昇、高電圧の侵入などによる感電、火災その他人体に危害を及ぼし、または物件への損傷を与えるおそれがないよう、接地その他の適切な措置を講じなければならない。
②電気設備の接地は、電流を安全・確実に大地に通じさせることができること。
・接地工事の種類
(解釈第17条)
接地工事は電気設備の電圧区分や危険の度合いなどから、A種〜D種の4種類が規定されている。 各設置工事の適用のベースとなる電圧区分は、A種は特別高圧と高圧、B種は変圧器二次側の低圧、C種は300V超過の低圧、D種は300V以下の低圧である。
種類
接地抵抗値上限
接地線の太さ下限
A種
10〔Ω〕
直径2.6mm
B種
特別高圧・高圧と低圧側との混触により、低圧電路の対地電圧が150Vを超えた場合、1線地絡電流をI
1
〔A〕として、地絡遮断時間により次の適用となる。
●150/I
1
〔Ω〕:2秒超過の遮断
●300/I
1
〔Ω〕:2秒以内の遮断
●600/I
1
〔Ω〕:1秒以内の遮断
直径4mm
〔高圧または15kV以下の特高と低圧を結合するもの直径2.6mm〕
C種
10Ω
低圧電路の地絡遮断が0.5秒以内のときは500Ω
直径1.6mm
D種
100Ω
・B種接地工事の目的
高圧または特別高圧電路と低圧電路とが混触したときに、低圧電路の電位上昇による危険を防止する。なお、混触は変圧器の内部故障や電線の断線によって発生する。
代表的な接地工事箇所
①高圧用機械器具
○高圧用の機械器具の鉄台および金属製外箱
○高圧電路の避雷装置
○特別高圧計器用変成器の二次側電路
②変圧器
○使用電圧が300V以下の場合で中性点が接地しにくいときは、低圧側の1端子に施設する。
③低圧用機械器具
・300Vを超える場合
・300V以下の場合
○鉄台および金属製外箱
○架空ケーブルのちょう架線
○特高電線路の木柱の腕金
○高圧計器用変成器の二次側電路
21B種接地工事の抵抗計算
・1線地絡電流の計算式
(解釈第17条)
B種接地工事の抵抗計算値には、1線地絡電流の計算が必ず必要になる。中性点非接地式高圧電路の1線地絡電流I
1
は、次式で計算できる。
V:公称電圧÷1.1〔kV〕
L:同一母線に接続される高圧電路の
電線延長
〔km〕
L’:同一母線に接続される高圧電路の
ケーブル線路延長
〔km〕
(注)1線地絡電流I
1
は2未満のときは2とする。また、小数点以下は切り上げるとともに、第2項、第3項が負のときはゼロとする。
電線延長とケーブル線路延長の算出方法
図の形態での算出例を示す。
(電線延長)
L=3l
1
+3l
2
(ケーブル線路延長)
L’=l
1
’
22D種接地工事の抵抗計算
・D種接地工事と接触電圧
図1の回路で漏電(地絡)が発生した場合の等価回路は、図2のようになる。
23総 則
(保安原則⑨:接地工事の施設方法)
・人が触れるおそれのある箇所の接地(解釈第17条)
比較的危険度の大きいA種およびB種接地工事を人が触れるおそれがある場合や接地線を鉄柱に施設する場合には、図に示すように施設する必要がある。
・架空共同地線(解釈第24条)
接地線代わりとして、直径4mm以上の硬銅線または5.26kN以上の引張強さのものを用い、直径400m以内で当該変圧器の両側に施設できる。 各極の接地抵抗値は300Ω以下とし、直径1km以内の合成抵抗値を規定値以内とする必要がある。
接地工事のポイント
①接地極:地下75cm以上の深さ
②金属体からの離隔:鉄柱の底面から30cm以上の深さ、金属体から1m以上離す
③接地線の保護範囲:地下75cmから地表上2mまでの部分
架空共同地線の適用
柱上変圧器低圧側のB種接地工事が土地の状況により施設困難な場合に適用できる。
24総 則
(保安原則⑩:接地極の代用)
・金属体などの接地極の代用(解釈第17条、第18条)
地中に埋設されている金属体は、一般的に接地抵抗値が低いことにより、接地工事の接地極として利用できる。
A〜D種の接地極や共有接地極に使用可能(一部を地中に埋設するとともに、等電位ボンディングを施すこと)
2Ω以下
の場合は非接地式高圧の
●機器外箱のA種接地極に使用可能
●変圧器のB種接地極に使用可能
金属体と大地間の抵抗が下表の値以下なら省略できる
・架空ケーブルでの接地(解釈第67条)
・
ちょう架用線
および
ケーブルの被覆に使用する金属体
には、
D種接地工事
を施す。
・
低圧の場合でケーブルを用い、ちょう架用線に絶縁電線を用いた場合は接地工事を省略できる。
接地抵抗値の覚え方
鉄骨の接地極としての代用は、保安面、経済面から都合がよい。
水道管=3Ω
鉄骨 =2Ω
として、文字数とΩ数が一致すると覚えておくと都合がよい。
等電位ボンディング
人が接近可能な導体部分をすべて接地線で連結し、等電位にすることで感電を防止する。
25総 則
(保安原則⑪:接地の省略条件)
・機械器具の鉄台および外箱の接地の省略条件(解釈第29条)
下図に示すケースでは、鉄台および外箱の接地を省略することができる。
26総 則
(保安原則⑫:電路・変圧器などの火災の防止)
・特別高圧電路などと結合する変圧器などの火災などの防止(電技第12条など)
①高圧または特別高圧電路と低圧電路を結合する変圧器は、高電圧の侵入で、低圧側の電気設備の損傷、感電、火災のおそれがないよう、変圧器の適切な箇所に接地を施す。
②高圧受電の非接地式低圧屋外電路の施設条件
③変圧器によって特別高圧の電路に結合される高圧の電路:高電圧の侵入で高圧側の電気設備の損傷、感電、火災のおそれがないよう、接地を施した放電装置を施設する
27総 則
(保安原則⑬:特別高圧用変圧器の施設)
・特別高圧配電用変圧器の施設(解釈第26条)
特別高圧配電用変圧器は、図のように施設する。
特別高圧配電用変圧器
郡部の電圧降下対策、都市部の過密化対策として、20kV級配電が昭和40年代から推進されており、これに用いる変圧器である。
・特別高圧を直接低圧に変成する変圧器の施設可能制限(電技第13条、解釈第27条)
原
則
①発電所など公衆が立ち入らない場所に施設する場合。
②混触防止措置が講じられているなど危険のおそれがない場合。
③特別高圧側の巻線と低圧側の巻線が混触した場合に自動的に電路が遮断される装置の施設その他の保安上の適切な措置が講じられている場合。
施
設
可
能
範
囲
①電気炉など、電流のおおきな電気を消費するための変圧器
②発電所、変電所、開閉所などの所内用の変圧器
③15kV以下の特別高圧架空電線路に接続する変圧器
④使用電圧が35kV以下で、特別高圧側巻線と低圧側巻線が混触したときに、自動的に変圧器を電路から遮断する装置を設けた変圧器
⑤100kV以下で10Ω以下のB種接地工事を施した金属製混触防止板を有する変圧器
⑥交流式電気鉄道用信号回路に電気を供給するための変圧器
28総 則
(保安原則⑭:過電流に対する保護対策)
・過電流からの電線および電気機械器具の保護対策(電技第14条など)
電路の必要な箇所には、過電流による過熱焼損から電線および電気機械器具を保護し、かつ火災の発生を防止できるよう、過電流遮断器を施設する。
・高圧電路の過電流遮断器の施設
包装ヒューズ
定格電流の
1.3倍
の電流に耐え、
2倍
の電流で
120分
以内に溶断するものか高圧限流ヒューズを使用
非包装ヒューズ
定格電流の
1.25倍
の電流に耐え、
2倍
の電流で
2分以内
に溶断するものを使用
①電路に短絡を生じたときに作動する過電流遮断器は、通過する
短絡電流を遮断する能力
を有するものであること。
②過電流遮断器は、その作動に伴いその
開閉状態を表示する装置
を有するものであること。
限流ヒューズ
ヒューズが遮断したとき生じるアークを、ヒューズ筒内の消弧砂によって強く冷却して消弧する。
29総 則
(保安原則⑮:地絡に対する保護対策)
・地絡に対する保護対策(電技第15条など)
地絡遮断器の施設義務のある箇所
原
則
①使用電圧が60Vを超える金属製外箱の機器で人が容易に触れるおそれのある場所のある電路
②高圧・特高電路と変圧器で結合される300Vを超える低圧電路
③高圧・特高の発変電所の引出口、需要家の受電点、配電用変圧器の施設場所
地絡遮断器の施設の省略条件
省
略
条
件
①機械器具を発変電所、開閉所に準ずる場所に施設する
②機械器具を乾燥した場所に施設する
③対地電圧150V以下の機械器具を水気のある場所以外に施設する
④機械器具のC種・D種接地工事の接地抵抗値が3Ω以下
⑤電気用品安全法の適用を受ける二重絶縁構造の機械器具を施設する
⑥電路の電源側に絶縁変圧器(二次300V以下)を施設し、その負荷側電路を接地しない
⑦機械器具をゴム・合成樹脂などの絶縁物で被覆する
⑧機械器具が誘導電動機の二次側電路に接続されるもの
⑨電気浴器、電気炉、電気ボイラなど大地から絶縁するのが困難なもの
⑩技術員駐在所に警報装置を設けた非常用照明装置、昇降機、誘導灯に電気を供給する電路
30総 則
(保安原則⑯:発電機の保護装置)
・発電機の保護装置(解釈第42条)
発電機には、次の場合に、自動的に発電機を電路から遮断する装置を施設しなければならない。
①発電機に過電流を生じた場合 ②容量500kV・A以上の発電機を駆動する水車の圧油装置の油圧または電動式ガイドベーン制御装置、電動式ニードル制御装置、電動式デフレクタ制御装置の電源電圧が著しく低下した場合。
③容量100kV・A以上の発電機を駆動する風車の圧油装置の油圧、圧縮空気装置の空気圧または電動式ブレード制御装置の電源電圧が著しく低下した場合。
④容量2000kV・A以上の水車発電機のスラスト軸受の温度が著しく上昇した場合。
⑤容量10000kV・A以上の発電機の内部に故障が生じた場合。
⑥定格出力が10000kWを超える蒸気タービンのスラスト軸が著しく摩耗し、またはその温度が著しく上昇した場合。
発電機や原動機の自動遮断
これらの設備は損傷による供給支障を回避するため、電路から遮断するよう規定されている。
31総 則
(保安原則⑰:公害の防止など)
・電気設備による供給支障の防止など(電技第18条など)
①電気設備は、他の電気設備その他の物件に
電気的
または
磁気的
な障害を与えないよう施設しなければならない。
②高周波利用設備は、他の高周波利用設備の機能に重大な
障害
を及ぼすおそれのないよう施設しなければならない。
③高圧・特別高圧の電気設備は、その損壊により電気事業者の電気の供給に著しい
支障
を及ぼさないように施設しなければならない。
④電気事業用の高圧・特別高圧の電気設備は、電気設備の損壊により電気事業に係る電気の供給に著しい
支障
を生じないように施設しなければならない。
・公害などの防止(電技第19条)
①変電所、開閉所もしくはこれらに準ずる場所に設置する電気設備または電力保安通信設備に附属する電気設備は、「ばい煙防止」を図る必要がある。
②発電所または変電所、開閉所もしくはこれらに準ずる場所で「水質汚濁防止法」、「水道水源水域水質保全法」、騒音・振動は「騒音規制法」・「振動規制法」の規制基準に適合しなければならない。
③
中性点直接接地式電路
に接続する変圧器を設置する箇所には、絶縁油の構外への流出、地下への浸透を防止する措置を施さなければならない。
④
ポリ塩化ビフェニル(PCB)
を含有する絶縁油を使用した電気機器器具は、電路に施設してはならない。
・発電機の機械的強度(電技第45条)
①発電機、変圧器、調相設備ならびに母線およびこれを支持するがいしは、短絡電流により生ずる機械的衝撃に耐えるものでなければならない。
②水車または風車に接続する発電機の回転する部分は、負荷を遮断した場合に起こる速度に対し、耐えるものでなければならない。
③蒸気タービン、ガスタービンまたは内燃機関に接続する発電機の回転する部分は、非常調速装置およびその他の非常停止装置が動作して達する速度に対し、耐えるものでなければならない。
32電気設備の施設
(感電・火災の防止①)
・電線路などの感電または火災の防止(電技第20条)
電線路または電車線路は、施設場所の状況および電圧に応じ、感電または火災のおそれがないように施設しなければならない。
・架空電線および地中電線の感電の防止(電技第21条)
①
低圧・高圧架空電線
には、感電のおそれがないよう、使用電圧に応じた絶縁性能を有する絶縁電線またはケーブルを使用しなければならない。
例外
通常予見される使用形態を考慮し、感電のおそれがない場合
②
地中電線
には、感電のおそれがないよう、ケーブルを使用しなければならない。
・低圧電線路の絶縁性能(電技第22条)
①低圧電線路中絶縁部分の電線と大地間・電線の線心相互間の絶縁抵抗は、使用電圧に対する漏えい電流が最大供給電流の1/2000を超えないこと。
②変圧器の定格容量をP〔V・A〕としたときの最大供給電流、許容漏えい電流、絶縁抵抗値の求め方は下表のとおりである。
電気方式
最大供給電流
許容漏えい電流
絶縁抵抗値
単相2線式
100V
最大供給電流の
1/2000
(電線1線当たり)
単相3線式
100/200V
三相3線式
200V
または
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